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<同棲> 年の瀬が詰まって、街は新年の祝いの準備に浮き立っていた。 KEIKOは来年が成人式だったが、実家へは帰らないといった。私もいつもは静岡に帰るのだが止めにした。電話の先で母のちょっと寂しそうな声が気になったが、今は少しでも彼女と一緒にいたいと思っていた。 大晦日と新年を二人だけで祝おうということになって、初詣でもかねて京都へ行くことにした。二人の初めての泊まり旅でもあった。
四条大橋に近い細い路地の奥にある、以前はお茶家だったという民宿に宿を取った。細い格子戸がそれらしい風情を漂わせる狭い入口を入ると、初老の女将が迎えてくれた。
私たちは、古いが良く掃除の行き届いた玄関を上がり、小さな中庭を囲むように巡る廊下の奥の部屋に通された。四畳半の和室に電気ストーブが一つの簡素な部屋だった。テレビも無かった。
他に数組の客がいるようで、時折若い女性たちの嬌声が聞こえていた。 女将にうながされて私から先に風呂に入った。かなり使い込んだ感じの小さな檜の湯舟に浸かりながら、はじめての古都の大晦日の感慨に浸っていた。
「背中流そうか?」 私の返事も待たずにKEIKOが湯殿に入ってきた。湯気の中に彼女の白い裸身が浮き上がった。
「此所って旦那さんと芸姑さんの逢い引きの場所だったのかしら?」 拝殿の軒の大きな銅鑼が重い音色で鳴った。何を願ったのか、KEIKOはゆっくりと時間をかけて祈りを捧げていた。 おけら火と呼ぶわらの紐縄に灯された火をくるくる回しながら、小躍りするように通りを宿へ急いだ。足元から京都独特の冷気が襲っていた。 |
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宿の近くの脇道で赤い提灯を灯した屋台を見つけた。色褪せたのれんをくぐると、関東炊きの甘い香りが鼻をくすぐった。
昭和41年の元旦の朝を迎えた。
昨夜はかなり冷え込んだようで、部屋の熱気に窓ガラスが曇って、外の様子はうかがいようが無かったが、天気は良いようだった。
「おはようさんどす・・・」 離れた廊下を若い女性のグループが笑いながら通っていった。床板が小さく軋んで鳴った。 |