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<別れ> KEIKOが救急車で運ばれて半日、その日の夕刻には彼女は自宅の和室の布団に寝かされていた。周囲の白と黒の幕と枕元の供台の線香が細い煙りを立ち昇らせていなければ、そのようすは普通の根姿だった。内出血によるものか顔色は赤みを帯びて、すでに命の止まっていることが嘘のようなやすらぎに満ちていた 通夜の客への挨拶と葬儀の相談で私は振り回されていた。ゆっくりKEIKOの亡骸と対峙出来たのは深夜になってからだった。
「ふう〜・・・・」 そこへ彼女の母が姿をみせた。母は私の前に座ると両手をついて言った。 私の瞼からも熱いものがどっと流れて落ちた。 |
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しばらくして母が部屋を出て行くと、私はひとりKEIKOの枕元に座り込んでいた。周りの家人も気を使ってか、誰も声を掛けずにいた。 ほんのり赤みの差した妻の寝顔は、今にも起きだしそうな自然な感じだったが、そっと触れたその肌は冷たく硬直していた。 無言の私たちを、ほのかな香のかほりと深夜の静寂が包んでいた。 |