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<別れ> 平成3年春。子供達が家を出てふたりだけの生活が始まって一年が過ぎようとしていた。 長男は家の経済を考えて家庭教師のアルバイトに励んでいるようだった。次男も都会暮らしにも馴れて落ち着きを見せていたが、難解な課題の多い授業にはあいかわらず手こずっているようだった。 私の仕事もまずまず順調だった。最近は地域の産業振興に係わるコンサルタントのような仕事も増えて、県内を東奔西走することも多くなっていた。ときにはKEIKOも同行して、私の仕事が済むまで近くを散策するのが楽しみになっていた。 平成3年10月20日。秋らしい快晴の爽やかな日だった。庭のケヤキの葉もすっかり色付いて、吹き寄せる風にハラハラと舞い落ちて踊っていた。
私は、ある組合の新製品の開発にからむデザインのプレゼンテ−ションを明日に控えて、最後の仕上げに追われていた。 「ねえ、ひさしぶりに行かない?」 |
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「つまんない〜!」 その日、私は夕食もそこそこに仕事に没頭していた。明日のプレゼンはそれだけ大事な仕事だった。 夜の10時過ぎ、私が仕事に区切りをつけて寝室に入ると、彼女は小さな寝息を立てて眠っていた。 そして、運命の朝を迎えたのだった。 |