<旅>

 帰国の日になって、ツアー客は最後の買物にと大きな民芸品店に案内された。KEIKOの買物の間にバスの中で一息入れている私に、日本人の現地ガイドが昨日の成果を聞いて来た。彼が言うには結構八百長があるらしかった。とにかく無事で良かったと笑っていった。

 彼は30歳そこそこだった。学生の頃にこちらに遊びに来て、現地の女性と恋に落ち結婚したらしいが、なんとなく愚痴っぽいようすに理由を聞くと、彼女の親族たちは、彼が日本人だから当然金持ちだという評価らしく、遠い親戚までもが彼を頼ってくるという。お互い助け合うといえば聞こえは良いが、どうやら景気の良い親戚に寄り掛かるのがこちらの流儀らしかった。宗教上離婚も出来ないらしく、日本の親からも勘当同前だということで、思えば気の毒な話であった。

 私が慰める言葉に困っていると、KEIKOが慌てた様子で走って来た。どうやら欲しいものを見つけたようだった。
「ねえ、どうしよう!」
 彼女は返事も待たずに私の手を取ると店の中につれていった。

 目当ての品は木彫りの帆船と貝細工の電気スタンドだった。帆船は80センチ程の長さがあり、スタンドもかなり大きな物だった。金額は両方で10000円程だったが、問題はどうして持って帰るかという点だった。結局スタンドの貝細工の笠はなんとか箱に入れてもらい、箱の無い帆船とスタンドの支柱は私が抱えて機内に入ることになった。

 帰りの飛行機の私たちの席は別々だった。私は大柄な白人と隣合わせになった。彼は、何を持ってるんだ?と言いたげな眼差しで私が抱える包みをしげしげと見つめていたが、私が照れた笑顔を見せるとおおげさに肩をすぼめて見せ、持っていた英字新聞に目を移した。

 私がやれやれとホッとしていると急にKEIKOの声が響いた。
「パパ!、席がとれたわよ!」
 どうやら彼女がスチュワーデスに理由を話し、空いているドア横の広い席を取ってもらったようだった。私は大勢の乗客の目が注がれているような気がして、はずかしさにそそくさと逃げるように席を移動した。

 そこはスチュワーデスさんと向かい合わせの席で、離陸の際にはお見合い状態になるのだった。男性としては願ってもない席だが、今の私にはちょっと恥ずかしい席だった。そんな心理状態を見すかされたように「大丈夫ですか?」とやさしい言葉をかけてくれた。
 私が照れ笑いをしていると、
「はい、大丈夫ですから・・・。」
 すかさずKEIKOが横から返事をした。

スチュワーデスが必死に笑いをこらえているように私には見えた。

つづく 

目次へ